文化・芸術

2017年1月 4日 (水)

『罪と罰』を読まない、を読んだ

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 ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことの無い人は多いと思う。かく言う私も読んでいない。
 そんな『罪と罰』を読んでいない作家4人が集まって、なんと読まずに読書会をするというもの。読んでいないのだから中身を推察していくしかない訳で、立会人に中の数頁を読んでもらい、それをヒントに「きっとこういう筋書きに違いない」とあれこれ推察を重ねていく。考えてみると随分ばかげているが、これがかなり真剣なやりとりで面白い。
 クラフト・エヴィング商會の吉田夫妻に三浦しをんさん、岸本佐知子さんというメンバーにも惹かれて手に取ったのだが、あまりにも面白くて一気に読んでしまった。後半は実際に読んでみた4名の感想が書かれているのだが、この本を読み終えたいま、2017年は『罪と罰』を私も実際に読んでみようと思っている。
 
 

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2016年12月 7日 (水)

ママレモン50年

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 「ママレモン買ってきて」と子供の頃に母に命じられた記憶が確かにある。だが、そのとき実際にママレモンを買ってきたかどうか定かではない。おそらく店頭にある食器用洗剤の中で、そのとき安売りされていた洗剤を買って帰ったのだと思う。
 
 同じような経験をした方がおられないだろうか?これはつまり「ママレモン」という商品名を、食器用洗剤の代名詞として用いている事例である。
 
 久しく忘れていたこの経験を、衝撃的な形で先月思い出した。当館の清掃を請け負っている女性がある朝、雑談のときにこう話してくれたのである。「ママレモン買ってきて、と娘に言ったら、お母さんママレモンって何?って言われたんですよ」。
 
 そう言えば、皆さんの家庭の台所にママレモンそのものはあるだろうか?かつて私の家にもママレモンは確かに存在した。いつもママレモンだったとは限らないが、ママレモンと聞けば黄色いパッケージの画像が頭に浮かぶ。
 ところが、最近の若い世代は既にママレモンを頭に浮かべることができなくなっているらしい。というのも、この清掃員の方の話を聞いたあと、その日1日、教育委員会の事務局職員から図書館の司書から図書館を訪れていた来館者まで、会う人会う人片っ端から「ママレモンって知ってます?」と聞いて回った結果、ある世代以下は確かに「ママレモン?なんですかそれ?」という回答を得たからである。
 
 これはすなわち、家庭からママレモンが消えつつあるということである。いや、既に消えている。実際の家庭の台所には、ママレモン(ライオン)に代わって、ジョイ(P&G)、キュキュット(花王)などが幅を利かせている。そもそもママレモンの発売元であるライオンからして、最近はCHARMY Magica(チャーミー)をヒット商品として押し出している。もはやママレモンは、食器用洗剤の代名詞としての存在感を失っていたのだ。
 
 これは生活文化史的に重要な現象のひとつではないだろうか。唐揚げとは異なる西洋式のスパイスと衣を付けた揚げ鶏の名称を「フライドチキン」として広めたのは、ケンタッキーチェーンであることは紛れもない事実で、ケンターキーフライドチキン(もしくは単にケンタッキー)がフライドチキンそのものを指す代名詞として、今日も広く使われている。同時期にやはりアメリカから参入してきたマクドナルド=ハンバーガーも同じだろう。
 ステープラーは、明治時代にイトーキの前身、伊藤喜が輸入した「ホッチキス自動紙綴器」から始まる「ホッチキス」または「ホチキス」なる商品名の方を用いないと、もはや言葉として通用しなくなっており、商品名代名詞の代表的存在だ。
 
 これらが商品名代名詞として不動の地位を確立しているのに対し、ママレモンのように、その後、同様の商品が多様化して地位を落としている、すなわち代名詞の座を降りつつある商品は他にも存在するはずである。コーラの代名詞であるコカ・コーラとか、乳酸菌飲料であるヤクルトとか。こうした現象は、消費型市民経済の発達による商品多様化を示す紛れもない証拠であり、博物館としては記録に値するのではないか?と思うようになった。
 
 ちなみに、調べてみるとママレモンは1966(昭和41)年に、当時のライオン歯磨株式会社(現在のライオン)から発売された。つまり今年で登場50年なのであった。
 
 登場から半世紀を経たロングセラー商品はいま、一般家庭の台所からは存在感を薄くしており、もっぱら中規模事業所の流しなどを中心に用いられている。静かに歴史を継承するママレモンに敬意を表し、今月から博物館の流しにもママレモンを配置している。
 
 

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2015年7月23日 (木)

『環オホーツクの環境と歴史』第4号が発刊

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 『環オホーツクの環境と歴史』の第4号が発刊された。この雑誌、私が帯広へ移ってきてから創刊され、あれよあれよで4冊目だ。発行元のサッポロ堂書店店主である石原誠さんが常任離れした精力的な方で地方文化の発信に並々ならぬ情熱を抱いており、これに北大図書館秘蔵?の知識の塊である兎内勇津流さんが実務的なサポートをされているおかげでここまで続いてきたのだと言える。他の編集委員の先生方がまた実に個性的だ。
 
 今回の目次はこちら。私は雑草調査の予報という、なんとも情けない報告が1編あるのみで、微力ながらとは言うが本当に微々たる協力しかしていない事を露呈している。
 お求めは発行元のサッポロ堂書店もしくは道内だったらお近くの古書店で注文すれば購入が可能。めんどうだったら、このブログにコメントで欲しいと言って頂ければ取り次ぎます。
 
 
【誌 名】環オホーツクの環境と歴史
【巻 号】第4号
【編 集】環オホーツクの環境と歴史編集委員会編
【発 行】サッポロ堂書店 
      〒060-0809 札幌市北区北9条西4丁目1
      電話:011-746-2940/FAX:011-746-2942
【価 格】1500円(税別)
【発行日】2015年6月23日
【ISBN】 978-4-915881-27-5


【目 次】
アカトーリー・レムニョフ・兎内勇津流訳:19世紀のシベリアにおける大学問題
金森正也:幕末期の蝦夷地をめぐる藩権力と領民の動向ー秋田藩を事例として
田中水絵:ニコライ・ネフスキーが遺したもの その3ー手稿「椋鳥」
持田誠:北海道の路面間隙雑草ー国道38号線調査の予報として
原田公久枝:妙に真面目な私の日記2
遠藤宏・遠藤美津恵:アイヌ民族の近現代史に関する基本的問題点ー国連の「先住民族の権利宣言」を踏まえて
因幡勝雄・石原誠
アイヌ伝承話集成 続 道東部 第二章別海町 第三章標津町 第四章中標津町(稿)
菊池俊彦:【書評】平山裕人著『アイヌの歴史』日本の先住民族を理解するための160話
高橋周:【書評】田島佳也著『近世北海道漁業と海産物流通』
 
 

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2013年3月21日 (木)

『環オホーツクの環境と歴史』第2号が刊行

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 サッポロ堂書店を発売元に昨年から出版されている『環オホーツクの環境と歴史』の第2号が発刊された。北海道、千島、カムチャツカ、サハリンといった、オホーツク海を取り巻く地域の歴史と文化、自然史に関する総合雑誌を目指している。
 
 
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 当館からは私と、副館長のU学芸員が原稿を寄せている。私は、隣の帯広市児童会館に収蔵されている「小林孝次郎コレクション」に関して報告。このコレクションは明治末期から昭和初期にかけての十勝と道内およびカムチャツカ産植物の標本で、なかなか興味深い。
 
 ただし、今回の原稿は標本そのものではなく、その解説資料として残されている「標本集目録」を活字化。もともとワラ半紙にガリバン刷り・ホチキス留めだったこの目録、単なる標本リストではなく、読み込むと当時の十勝やカムチャツカに関する記述があり、なかなか面白いのである。
 
 その他、この雑誌は独自サイトが無いので、目次を以下に記載。
 
環オホーツクの環境と歴史 第2号
2013年3月 サッポロ堂書店発行 1500円
 
 <目次>
岩崎義純,アイヌシアター「イコロ」の人形劇...3-7.
 
岸甫一,開港期箱館からみた外国人居留地の成立過程(その1)...9-28.
 
持田誠,『小林孝次郎植物標本集目録』を読む...29-45.
 
田中水絵,ニコライ・ネフスキーが遺したもの:東洋学研究所蔵アイヌのフォークロア原稿&折口信夫宛て絵葉書...47-58.
 
因幡勝雄,浜の環オホーツク...59-62.
 
ジョン・ミルン,水野勉(訳),千島列島の火山を巡る航海...63-74.
 
ブロニスワフ・ピウスツキ,兎内勇津流(訳),サハリン島の個々のアイヌ村についてのいくつかの資料...75-98.
 
内田祐一,故秋野茂樹氏を偲んで...99-100.
 
【書誌事項】
環オホーツクの環境と歴史 第2号
2013年3月12日発行
 
編者 環オホーツクの環境と歴史編集委員会
 
発行所 サッポロ堂書店 〒060-0809 札幌市帰宅北9条西4丁目
    電話:011-746-2940/011-746-2942
ISBN:978-4-915881-22-0
 

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2011年5月 2日 (月)

またひとつ古書店が消える

 ススキノ交差点に近く、市電からも見ることのできる南四条に、「石川書店」という古書店がある。この古書店が近く閉店すると言う。郷土史料や山の本などが充実していて、学生時代には何度も本を買ったり、金欠になると買って貰ったりした。

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 行ってみると店は閉まっていた。そう言えば月曜日は定休日だったのを思い出した。


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 閉店を告げる張り紙が寂しく張り出されていた。在庫処分セールを開催中だと言う。ご挨拶代わりに何か購入しようかと思っていたのだが、残念だった。

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 ニッカおじさんの看板に札幌市電。見慣れたススキノ交差点界隈の影で通い慣れた古書店が消えていく。石川書店の創業は1934(昭和9)年で、北海道新聞の記事によると札幌で2番目に古い古書店なのだそうである。寂しいなあ。

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2011年2月26日 (土)

おびひろ市民ミュージカル第8回公演

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 25-26日と出張で札幌へ。今日の夕方に帯広へ戻り、百年記念館へ顔を出す。と、今日は百年記念館でいつも練習されている、おびひろ市民ミュージカルの公演があることを、危うく忘れかけていた。切符も頂いていたので、開演に間に合うように飛び出し、十勝バスで再び駅前へ。

 会場の帯広市民文化ホールへは初めて入った。最初、駅前の十勝プラザの中にあるものと勝手に思いこんで、長崎屋前でバスを降り、そのまま1階のロビーへ。キョロキョロしながら案内受付の女性に切符を見せたら「長崎屋さんの反対側です」と丁寧に案内していただいた。よく確かめなかったことを反省する。結局、バス停を降りてから十勝プラザ経由で長崎屋さんを一周してしまった。


 さて、市民ミュージカル。元々、札幌に居た時から、学生劇団や市民劇団の舞台をときどき観に行っていた。なので今回、百年記念館事務のKさんから「ミュージカル興味ありますか?」と言われたときも素直に切符を頂いてしまったのだが、出張前の忙しさなどで内容の確認どころか、おびひろ市民ミュージカルがどんなものかも確認せず、しかも当日も半分忘れかけているという甚だ失礼な状態での会場入りであった。

 そんな状態で駆けつけた公演は「さよならスパッツァカミーノ」。100年前のイタリアを舞台に、スイスから人買いによって連れてこられ、煙突掃除夫として酷使される子供達を描いた作品である。原作はドイツ人の亡命作家リザ・テツナーによる「黒い兄弟」。

 予備知識ゼロ。席についてパンフレットを開いてから、初めて公演作品名をきちんと確認したというていたらくなのだが、その分、開演後は一気に熱演に引き込まれてしまった。久々に、舞台公演独特の緊張感と興奮が伝わってきて心地よい。
 小学生から社会人まで、さまざまな年齢層の十勝人(帯広市内だけでなく各町村からも参加)による劇団で、個性さまざまなところも面白い。皆さん素晴らしいが、特に私の中でピカイチだった役者さんがお二人。別格に上図な死神役と、狼団のジョバンニ役が「うまいなあ」と思った。

 歌と踊りを交えた2時間30分は、あっという間であった。ストーリーにも熱演にも感動を受けた。歌声が今も耳から離れない。すっかり忘れかけていた者に何も言う資格は無いのだが、本当に観に行って良かった、舞台って良いなと思う時間であった。

 ♪スッパッツァカミーノ、スパッツァカミーノ♪♪
 ♪煙突掃除はいかがですか♪♪

おびひろ市民ミュージカル(通称obiカル)のサイトはこちら
http://www.obical.com/Top.html

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