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2016年8月 9日 (火)

天皇陛下の「お気持ち」

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 昨日8月8日の15時から、今上天皇が御自身の意向を「お気持ち」という表現で各報道機関を通じて表明された。事前に予測されていたとおり、その内容は「生前退位」の御意向を強く反映したものであった。
 
 テレビ各局も同時放送、同時に宮内庁は全文をホームページで公開。71年前の終戦の玉音放送を彷彿とされる体制で、きわめて珍しい形の表明であった。
 
 明けて本日9日の北海道新聞と毎日新聞。今日は長崎の原爆記念日であり、通常であれば長崎が1面トップに来るだろうが、やはり昨日の天皇陛下の「お気持ち」表明がトップに来ている。これはやむを得ないだろう。
 
 
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 今年1月の通常国会から、天皇が臨席する開会式に出席するようになった日本共産党も、赤旗の1面トップに天皇の発言を掲載。同じページに志位委員長の談話も掲載されている。
 
 学芸員的には、道新、毎日、赤旗ともに、歴史資料として少なくとも1面、および全文を掲載したページは保存しておいた方が良いだろう。個人的には各紙によりスタンスが異なるだろうから、朝日、読売、日本経済くらいは比べてみたいところ。
 
 
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 折しも「お気持ち」表明の前日の7日、定期購読している岩波書店月刊誌『世界』9月号が届いていた。本号では九州大学名誉教授の横田耕一先生による「憲法からみた天皇の「公務」そして「生前退位」、放送大学教授の原武史先生による「象徴天皇制の“次の代”:「革新と断絶」から読み解く生前退位」が掲載されていた。そこで、「お気持ち」が表明される前に、まずお二人の論考を読んでおいた。
 
 横田先生によれば、今上天皇の負担になっている「公務」の多くは、憲法の定める「国事行為」でも、宮中祭祀などの「私的行為」でもない「公的行為」とでも呼ぶべき「第三の行為」であり、本来は位置づけの無いものであって、その行為を整理する事で負担の軽減ははかれるはずであり、また、そもそもそれらの「第三の行為」の位置づけについて、憲法上の位置づけから危惧を抱かれているようである。
 
 原先生は、時代による天皇制の変化、特に象徴天皇制の役割と中身の変化は当然であり、そもそも「天皇像」は時代時代によって革新されつづけてきたものであると解説。生前退位が実現した場合、「皇居」の問題、退位された後の今上天皇の位置づけや、皇太子なき現状における「皇太弟」を含めた三者並立の課題など、近代以後、経験の無い天皇制の変革に際して予見される事柄を具体的に述べておられる。
 
 お二人の記事を読んだ上で聞いた天皇陛下の「お気持ち」は、確かに憲法や皇室典範の内容を厳密に解釈した上で聞くと、いろいろと複雑な問題をはらんでいるように思える。特に、横田先生の述べられるように、本来、国事行為として位置づけの無い多くの「公的行為」が象徴天皇制の中でどのように位置づけられるのかを考えると、非常に厳しい意見が出てきたとしてもやむを得ないと思われる。
 
 だが、それを理解した上でも、率直な感想としては「お気持ち」を最大限尊重した形での制度改正がなされると良いなと思う。そもそも、今上天皇への国民の「親しみ」の源泉は、陛下ご自身が築かれてきた数々の「公的行為」にあるのは論を待たない(お二人の記事でもそれは言及されている)。象徴天皇制の必要性を国民が実感している源がまずそこにあり、これらの「公的行為」が憲法上に位置づけの無い「第三の行為」だとしても、今後の天皇のあり方を考える上でこれらを抜きにした天皇のあり方というのは、現代では現実的に考えられないのでないか?
 
 また、「公的行為」を抜きにした「天皇の役割」を議論していくと、結局は象徴天皇制そのものの維持という部分に、どれだけ共感が得られるか(もしくはそう結論づける事になる政府に対する共感が得られるか)という問題が出てくるように思う。
 
 「お気持ち」を聞いて非常に感銘を受けたのは、陛下が昭和天皇が崩御される前後の世の中のさまざまな「停滞」を非常に危惧されている事である。陛下ご自身の口から、この危惧が語られるとは予想外である。そうした意味で、予想以上に踏み込んだ内容の「お気持ち」だったと思う。
 
 今後、さまざまな検討がされる中で、さまざまな問題はあろうが、まずはやはり今回表明された御意向が最大限考慮された結論が出る事を望んでいる。
 
 
 
 

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