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2016年3月17日 (木)

ひな人形に戸惑い、そして大いに学ぶ

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 北海道開拓の村では、まだ雛人形を飾っている(年中行事 桃の節句 ひなまつり 21日まで開催)。今年、自分で雛人形展を担当しなければならなくなり、いろいろと悩む事があったので、勉強のために見学に行った。
 
 
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 雛人形について悩んでいた点は、細かくはいろいろあるが、最も問題意識を持っていたのは以下の2種類の人形の並び順についてである。
 
(1)三人官女は1人だけ眉毛が描かれていない人形がある。通説では、この官女は位が高く、位置としては真ん中に置く。三体のうち、両側と中央で姿勢が異なる(両側の官女が立位ならば中央は座位といった感じ)。だが、眉毛の有無と姿勢のバランスが一致しない人形がある → 両側の人形と中央の人形で、姿勢中心に揃えると、眉毛の無い官女が両側のどちらかに位置してしまうという矛盾
 
(2)仕丁(五人囃子よりもさらに下の段に位置する三人の男性の人形)の表情は、泣き、怒り、笑いの三種に分けられる。持ち物もそれぞれ決まっている。通常はそのうちの1体が年長者である。通説では、向かって左側から、泣き、怒り、笑いの順に配列され、持ち物はそれぞれ台笠(熊手)、沓台(塵とり)、立笠(箒)である。また、通常は立笠を持つ笑いの表情の人形は年長者(爺さん)である。
 
 今年、浦幌では上記の通説にしたがって、配列を決めた。昨年までは上記の並びでは無かった人形もあったが、今年は並びにあたって直し、キャプションにも並べ方として上記の説明をした。
 
 
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 さて、北海道開拓の村で展示されている仕丁である。今回、開拓の村の雛人形は、大半がこの並びであった。さきほどの通説とは、表情と年齢を基準に考えると、並びが正反対となっている。
 だが、持ち物を基準に置くと通説と一致する。しかも、注目は人形の足の崩し方で、こうした場合、立て膝もしくは前に投げ出している方の足が外側に来るように配列すべし、という説があり、この姿勢から考えても順当である。
 
 
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 開拓の村には多くの雛人形が、村内のさまざまな建物に分散して展示されており、これらを巡って歩く事ができる。これは展示の仕方として楽しい。浦幌とは規模が異なるが、分散展示そのものは、巡って楽しむという点から良い方法だと思う。
 
 同館の細川学芸員に話を聞くと、並べ方の通説は確かにいろいろあるのだが、実際の人形は必ずしもその通りになっていないケースが結構あるとのこと。むしろ、開拓の村ではこれらの雛人形が村へ来る以前、つまり寄贈者の家庭でどのように飾られていたかを写真で記録しているので、その写真に基づいて並べているとの事であった。
 
 うーん、なるほど。これは確かに言われてみればそうだと思った。
 生活資料、すなわち民具は、玩具であれ道具であれ、モノとしての実体と共に「どのように使われていたのか?」が重要な資料情報である。宮中や武家や由緒正しい豪商などならともかく、庶民の家庭が学説的な並べ方に必ずしも従っていたとは限らない。むしろ、通説は通説としてあるが、一般家庭ではあんまり気にせず並べていた、もしくは家庭で購入するような雛人形は、もともと通説どおりに作られていたとは限らなかった、という実態を把握し、展示に反映する事こそが、我々博物館の役割かもしれない。
 
 このあと、小樽市総合博物館でも話を聞いた。やはり通説どおりとならない人形が多いと言う。もちろん、その原因は製造者にあるとは限らない。私にも経験があるが、子供の頃、飾ってある人形の首を取り外して、他の人形とすげ替えたりする遊びをした事がある。そうした結果が反映されて、衣装や持ち物と顔の表情が異なった状態で保存されているケースも、玩具である以上は当然考えられるだろう。小樽の石川さんの話では、かつて人形の首だけ、パーツとして売られていたそうだ。
 
 つまり、今年の浦幌での展示は、あまりにも通説にこだわり、ガチガチに「これが正しい並び方です!」的なやり方をしてしまったのである。ここは猛烈に反省する必要があるだろう。
 
 来年度の展示、そして民具や民俗の展示に心得ておかねばならない事を学んだ気がして、札幌・小樽へ出てきたかいがあったなあと思った次第であった。
 
 

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