« 収蔵作品展の撤収 | トップページ | 広尾町から資料をいただく »

2014年7月25日 (金)

広尾町の「さつき食堂」

Photo

 
 同僚の小林さんに「広尾町へ行ったら、さつき食堂へ寄ってみて下さい」と言われ、教育委員会へ資料調査に立ち寄った帰りに昼食を食べてきた。
 
「ガス屋さん本州の人かい?〔白い開襟シャツに青い作業ズボンだったせいか、ガス会社の人と思われたらしい〕訛りでわかるね」
 
「うちはラーメンだけだから。下に塩入っていて、上に醤油入っているからね。あたしが考えたんだ。まろやかで美味しいから」
 
「次来た時はこれもう食べたっていってね。そしたら醤油〔だけのやつ〕だすから」
 
「昭和31年に、元町の方で最初の店出したんだわ。その時は定食屋で、ハモ丼とか何でも作ってたんだ。あたしの作るものは美味いって大評判だったんだ」
 
「修行?どこにも見習いにも修行にも入ってないさ。全部自分で勉強したのさ」
 
「その頃はニチロの工場とか2つもあってさ、広尾も一万五千人いたんだわ。人が多くて賑やかだったね。〔なんの工場だって?〕ニチロだよニチロ。ガス屋さんニチロ知らんの?今の広尾は七千五百人くらいじゃないかな」
 
「缶詰工場の人相手に飲み屋さんもいっぱいあってね。夜になると、飲み屋で働くお姉さん達がよく食べに来てくれたわ。ほんと賑やかだったね。」
 
「お通夜とかには店閉めてね。お寺用に〔料理を〕作るんだわ。〔仕出し?〕仕出しじゃないよ。その場へ行って台所を仕切るのさ。」
 
「大人数をさばくからね。そりゃ大変さ。でもあたしの料理は評判だったからね。前の店の時はずっとやってた。お寺さん喜んでね。お東さん、お西さん、広縁寺さん、禅林寺さん…〔以下、町内のお寺の名が続く〕みんな呼ばれたよ、ほんと」
 
「いまはもうね、あんまりお通夜行かないんだ。人多くなると、〔今の〕料理仕切る人も大変だろうと思ってね。あたしはわかるからさ」
 
「仕出しも作ったよ。売ってる仕出しはさ、醤油とかソースとか別に入ってるしょ。あたしのは料理の味つけといて、そういうのかけなくて良いやつにした」
 
「必ず9品付ける事にしてたんだ。今のメンマだってチャーシューだって、夜にきちんと自分で味つけてるんだ。だからうまいんだよ」
 
「昭和55年に今の場所に移ったんだ。そしてラーメンに絞ったんだ」
 
「主人がさ、子どもいる訳でも無いし、そんなに金儲けする必要ないんだから、安く出してあげなって言ってね。それで、最初の価格を据え置いてやってく事にしたの。その時に〔町の〕食堂組合からも抜けたんだわ」
 
「ラーメンだけにしたら、みんな残念がってくれてね。お寺さんの若さん〔現在のお坊様〕なんか、いまだにがっかりしてるよ」
 
「消費税3%の時に360円。これ以後、5%になっても8%になってもずっと変わっていないよ」
 
「だけど今年さ、8%になっても豚肉は値上げしないって最初言っていたのさ。だから値段もそのままにしたんだけど、その後に税金とは関係ないところで豚肉が値上がりしてしまって。10円も上がったんだ。だから大盛りは肉3枚付けていたんだけど、今は2枚にさせてもらった。まあ、あたしらも大変だけど肉屋さんはもっと大変だ」
 
「あたしは跡とり作らないんだ。味を落としたくないのさ。偉い料理人の先生も、テレビやったって本書いたって、それ見て作ってもそりゃ私達が作ったような訳にはいかないって言ってるしょ。教えてすぐどうなるってもんでもないしさ。だから、この店はあたしが死んだら終わりだよ」
 
「最近の広尾は若い人ばかり死ぬ。昨日も50代の人、今日も60代の人のお通夜あるよ。あたらしらみたいな80代は、粗末なもんから食ってきて体も鍛えてるからさ。若い人は変なもん〔合成着色料とか〕いっぱい入ってるもの食べてきてるから、体もたないのかなあ」 
 
 
2
 
 昭和6(1931)年5月25日生まれの83歳。5月生まれで店も5月に開けたから「さつき食堂」なのだと言う。生まれは岩内との事。船を持っていた御主人は既に10年以上前に亡くなり、一人で店を切り盛りしている。
 
 ラーメン普通盛り360円、大盛り460円。味は醤油と塩それに両者のミックスの3種類のみ。広尾町の盛衰と共に歩んできたラーメン屋「さつき食堂」は、今日も11時30分から20時まで、国道から外れた坂道の途中で店を開けている。いつか再び、じっくり話を聞きに行き、地域の歴史証言として活字に記録したいと思う。
 
 

|

« 収蔵作品展の撤収 | トップページ | 広尾町から資料をいただく »

十勝」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/572033/60039955

この記事へのトラックバック一覧です: 広尾町の「さつき食堂」:

« 収蔵作品展の撤収 | トップページ | 広尾町から資料をいただく »