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2011年12月21日 (水)

東京大学総合研究博物館ただし展示は見ず

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 12月19日に標本調査で訪れた東京大学本郷キャンパスにある東京大学総合研究博物館。大学博物館として実験的な試みの展示で有名な博物館である。ただし、実は私は未だにここの常設展示を見た事が無い。いままで何度か足を運んでいるのだが、いつも裏口から標本庫へ行ってしまい、標本調査をしているだけで時間が過ぎてしまうのである。同じようなことが京都大学総合博物館や国立科学博物館筑波実験植物園でもあり、これらの博物館は収蔵標本数が多い事もあって、そちらに時間をとられてしまうのである。これは良くない事で失礼な事だとも思う。やはり調査と見学は別々に計画するべきなのだが、結局「こんど標本を見に行った時に見学しよう」となってしまう。今回も展示は見られなかった。


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 北海道にいると北大の標本庫がでかいなと思うが、やはり東大の標本庫は大きい。何が大きいって、ここには離弁花類と単子葉類が納めてあるだけで、合弁花類は小石川の東大植物園に収蔵されているのである。分担が必要な程の規模という事だろう。


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 整然と並ぶ標本棚。やはり標本は棚に入れて収蔵するべきものだな、とつくづく思う。うちも標本棚欲しいなあ。


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 ジーナスカバーに種ごとに挟まれた標本で、棚の中は満杯。赤いカバーはタイプ標本である。

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 歴史ある標本庫は、どこも未整理標本の山を抱えている。院生学生研究員が総動員で整理にあたっても、山はなかなか崩れていかない。論文に名前が出る研究者の裏側では、こうした地道な標本管理の努力を積み重ねてきた多くの無名な人々の存在がある事を忘れてはならない。


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 「ここに段ボールを置かぬこと」 なんだか切なくなる。


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 標本庫の窓際の一角に机や顕微鏡があり、このスペースをお借りして調査を実施する。標本はただしまってあるだけのものではなく、展示の為のストックでもなく、やはり研究に使う為の大切な資料である。収蔵する博物館は、いろいろな人に標本を使ってもらえるように、情報を公開したり、研究スペースを用意したりする。細かい事だが、大切な事である。


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 私たち植物担当の学芸員や研究者は、日常的に多くの標本庫を行き来している。そこで目的の植物を調査する訳だが、訪問先の標本庫の標本に誤同定のものや学名の変更があったものを見つけた場合、「同定ラベル」とか「アノテーションラベル」などと呼ばれる紙片を標本に貼ってくる。「私の見解ではこの標本はこの植物だと思います」という意思表示である。世界中の標本庫で、いろいろな学芸員がこうして気の付いた点を同定ラベルにして貼り付けていく。その結果、お互いの標本庫の精度が向上していくのである。逆に言うと、誰も訪れてこない標本庫はいつまでたっても進化していかない。いつから行われている習慣なのかわからないが(とても興味ある事だが)、よく考えられた風習である。かくして、私も今回、2点の標本に同定ラベルを付してきたのであった。


  

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