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2011年12月17日 (土)

横浜の墓地にて

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 昨日から標本調査で横浜へ来ている。横浜には現在、父が一人で暮らしている生家があり、そこへ滞在しているのだが、ここへ立ち寄るのも久方ぶりである。今年は1月に、父の姉にあたる叔母が亡くなったが、都合がつかずに葬儀にも出なかった。前後の都合がどうしてもつかず、移動を含めて4日間の滞在で、しかも標本調査に加えて2つのセミナーをこなす事になったため時間がとれないのだが、合間を見て墓参に行った。

 しばらく手入れされていない墓の周囲には、雑草が群落を形成している。ホトケノザなどは花まで咲いている。昨日の朝、帯広は氷点下だったので、羽田空港へ降りた途端に暑くてならなかったが、植生の状態を見ているとまるで別の世界である。しかしお墓の周囲にホトケノザというのは、洒落ている。


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 実は私は墓地無用論者である。お墓というものは無くて良い、あっても共同墓地があれば良いと考えている。お墓、墓参さらには葬儀という行為そのものが、死者の為というよりも残された人間の心の安らぎの為に存在する。それ自体は良いのだが、家が分かれていく度に細かくお墓が増え続けていくという事に、私はどうも馴染めないのである。かと言って「●●家之墓」というのはもっと反対で、旧来の家制度そのもの、しかも末代まで「墓を守る」という行為がついて回るというのだから、全く民主国家日本の制度としてどんなものか?とまで考えてしまう。私の両親のように離婚してしまうと、当然ながらそれぞれ別々の墓に入っていく事になり、そこでまたいろいろと面倒な事が出てくるようで、全くいつまで死者の為に生者が犠牲になるような風習を続けていくのか?とうんざりする事も多々あったりする。

 もっとも、それはあくまでも私個人がそう思うだけで、それを他者に押しつける気は全く無い。お墓を大切にしている人が大多数なのは事実だし、今存在するお墓というものに対しては誠実に向き合っていきたいとも思う。なので、横浜へ帰る時にはこうして祖母の墓参に来たりするのだが、一方で私は墓地という環境がなかなか好きなのも事実である。


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 第一に、およそ墓地というものには喧騒というものが無く、静寂に包まれている。また、植生の自然度が高い場合も多い。さらに、独特のしっとりした環境があって、大抵はシダとかコケなどの隠花植物なのだが、いろいろと面白いものが見られたりもする。仏花を立てる筒の水などには、植物プランクトンが大量に発生していたりする。


Adiantum

 Adiantumがびっしりと生える、墓地の石壁。ものすごい量が壁を埋めていて圧倒される。


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 ハタゴケの仲間だと思うが、これもたくさん壁に貼り付いている。


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 墓地を囲む森林も結構深い。母方の祖母の墓があるこの墓地は、財団法人が経営する霊園で、周囲は常緑の照葉樹が混じった自然林に囲まれている。夏に来ると林縁には、神奈川県の花に指定されているヤマユリをたくさん見ることができる。さすがにユリは無かったが、キク科やイネ科の花はまだまだ咲いており、関東の自然林を感じる事ができる。


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 実際、この霊園の真向かいの森は、横浜市の自然観察の森が設置されている。


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 時間のある時には、墓参の帰りにここへ寄る事がある。今回は残念ながら時間が無くて立ち寄れないが、静かな墓地と言い、この森と言い、なかなか良い所である。


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 この墓地のある横浜市金沢区周辺には、このように崖の中腹で母岩をえぐったような場所を見る事が多い。そして、中にはこうしてえぐった空間に仏像を安置している場合がある。磨崖仏(まがいぶつ)と言い、この地域独特のものである。崖のえぐれた部分が崩れてしまった場合には、仏像だけ崖の外に出して安置しているものもある。このあたりは横浜市の中でも鎌倉方面に接している所で、独特の文化があったのだろう。一度ゆっくり見て回りたいと思いつつ、今回も時間の都合で観る事は叶わなかった。


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 変わって、こちらは夕暮れ時の港北区の墓地。父方の祖母の墓があるここは、檀家の墓を集めた昔ながらの農村墓地である。もう使われていない火の見櫓が残っており、夕空に櫓の影が映える。その向こうに、横浜港に立つランドマークタワーと、東海道新幹線新横浜駅前に建つプリンスホテルが見える。ミナトヨコハマとオカヨコハマの2つの象徴が、遠く並んで見えるのである。かつては樹林と畑が広がっていたのだが、今はすっかり住宅が迫っている。

  


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