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2011年6月14日 (火)

標本ラベルの修復

 比較的、状態の悪い標本の修復は終わり、終盤に入ったレスキューは作業速度が向上。好調に飛ばしている。が、しかし、ここへ来て標本ラベルの状態が悪いものにぶちあたった。

 と言っても、もともと状態が悪い訳ではない。実はこれ、私の判断で実行しているのだが、オリジナルラベルと整理ラベルが上下くっついている場合、上下分離を実施していて、この際にラベルの破損が生じてしまうのである。

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 カビや汚れも少なく、部品の脱落も無い、状態の良好な罹災標本。


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 しかしよく見ると、ラベルが2枚重なっている(下に貼られているラベルが透けて見えるのがわかるかな?)。上に貼られているのが陸前高田市立博物館が作成した整理用のラベル、下に貼られている(つまり台紙と接している)ラベルが、鳥羽源蔵のオリジナルラベルである。


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 まずは洗浄。台紙ごと標本ラベル部分を切り取り、水に浸す。ここまでは他の標本と一緒。


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 ここからが考えもの。いろいろ悩んだが、私はオリジナルラベルの救出が第一と考え、上下ラベルは極力分離するように努めてきた。オリジナル優先の考えのため、分離作業に際して、整理ラベルの破損はある程度しかたがないという考えである。写真は水浸→乾燥→水浸の順序で少しずつ上下分離しているラベル。まだ上下分離に至っていないが、整理ラベルの左端が切れてしまっている。


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 この課程で、ボールペンやゴム印の記載内容採が滲んでくる。もちろんカルテに記載事項は移しているのだが、ハラハラする。


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 標本本体が乾燥に向かっても、ラベルの上下分離作業は続く。粘り強く剥離を続けた結果、整理ラベルとオリジナルラベルがようやく分離した。次は修復。自分が標本ラベルを製作するときに使っている中厚口の上質紙を濡らし、その上に破損した整理ラベルを濡らした状態で載せる。


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 ちぎれた紙片を、上質紙上で合わせていく。場合によっては、紙をほぐして繊維を埋め込むような形でつないでいく。


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 下に貼られていたオリジナルラベルの方にくっついてしまった文字を丁寧に剥がし、整理ラベルの所定の位置にはめこむ。昔、「インレタ」というのがあって、論文の図版を作るときに貼り込んだが、あれと似た作業で、思わず懐かしくなる。


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 ある程度形になったら再び水に浸け、水あげ後は窓にはって紙を伸ばして乾燥。この過程で失敗すると貼り合わせ部分がずれてしまうので要注意なのだが・・・


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 うーん、これはちょっと失敗。アルファベット部分が再水浸時にズレてしまった。ただ、これ以上いじると修復不可能になりそうなので、このまま乾燥させることに。


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 こちらは上下分離後のオリジナルラベル。こちらが優先なので破損は整理ラベルよりも少ないが、それでも整理ラベルにくっついていってしまった文字などがある。


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 こちらも外れてしまった文字などをピンセットで元の位置に貼り付ける。今回、オリジナルラベルにこだわったのは、採集地の地名表記が整理ラベルと異なる(旧地名で書かれている)場合が多いことや、採集者の注記があることが理由。例えば、このアヲナラのラベルには、ラベル下方にペン書きで「コナラと同種とみられる」との書き込みがあるが、これは採集・同定者である鳥羽源蔵氏の考えを示した記述であり、重要だと考えるからである。


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 こうして上下分離後に整形した標本を窓に貼って乾燥させる。仲良く並んだ整理ラベルとオリジナルラベル。


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 あとは新聞紙に挟むが、私はティッシュに包んでから新聞紙に挟んでいる。

 標本ラベルの剥離は、無理をせず、元の台紙に貼られたまま切り取り、ヨゴレのみ落として標本本体と共に乾燥させるというのが原則かもしれない。水に浸けることで、記載事項が滲んでしまったり、薄くなってしまう危険があるからだ。整理ラベルとオリジナルラベルが重なってしまっているラベルは、無理をせずにそのままというのもひとつの考えではあると思う。

 しかしながら、私としてはオリジナルラベルをできるだけ活かしたい。採集者の意図を反映させているラベルだし、植物学的な意義以外に歴史的な意義もある。もちろん整理ラベルにも独自の意義がある。したがって、どちらも見える状態で保存したいのである。そこで、帯広担当分では今のところ、全標本のラベルを上記のように分離し、特にオリジナルラベルを重視した修復を進めている。


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