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2011年3月26日 (土)

エゾシカの列車事故

 野生生物総合研究所による「北の希少野生生物講座」があり、釧路へ出かけた。本当は初日から行きたかったのだが、都合で2日目のみに。初日の晩の特急で1年ぶりくらいで訪れた釧路は、十勝よりも雪深かった。

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環境省の主催。事業請負先が株式会社野生生物総合研究所。同研究所がこうした事業を運営するのは、恐らく初めてだと思われる。

2日間の講義を受講すると受講証というのがもらえるそうだが、それには全く興味は無く、講師陣が興味深いのと、学生時代にとてもお世話になった野生生物総合研究所の企画ということで、ご挨拶をかねての参加となった。充実した講義は勉強になったと共に、霧多布湿原センター館長の河原さんによるワークショップが面白く、博物館教育論の観点からも学びがいのある講座だった。

講義で印象に残ったのが、猛禽類医学研究所の齋藤獣医師による「ワシタカ類の列車事故」。オジロワシやオオワシが列車にはねられる事故が、根室本線と釧網本線を中心に多いらしい。原因は、エゾシカの列車事故がまずあり、その死骸が線路脇に残されることで、後からワシタカ類が線路脇に集まってくることに原因があるようだ。運転台からその様子を映した映像があり、直前まで飛び立たないことがわかる。また、そもそも線路の敷かれた盛り土は見晴らしが良いため、猛禽類は列車の物音などに反応して、わざわざ盛り土に上がってきてしまうらしい。

この対策としては、列車事故後のエゾシカの死骸を、できるだけ速やかに線路際から撤去する必要がある。しかし、現実的にそんなことができるだろうか?鉄道側の視点に立つと、なかなか厳しいなあと考えながら帰途についた。すると…。


釧路19時08分発の札幌行き特急スーパーおおぞら14号に乗車。白糠を定時に発車した列車が、恐らく音別あたりを通過中だと思う。ちょうど車内販売で缶ビールを買っていたら、列車に急制動がかかった。その衝撃で、車販のワゴンが通路前方に転がってしまった。まさにエゾシカが列車に衝突したのであった。
運転士と2名の車掌が集まり、直ちに線路支障の列車防護と車両や線路の点検が実施される。車内販売を担当していた客室乗務員も、急制動の衝撃で怪我をした乗客がいないかどうかの点検にまわる。約13分間の臨時停車だったが、いずれも若手の職員達がテキパキとした処置を行い、説明も丁寧だったので、車内の空気はいたって平穏だ。
再度発車した列車は、数回、急制動をかけていたので、恐らくエゾシカの群れが列車前方に残っていたのだろう。そのため、池田に着いた頃には遅れが広がっていたが、その後の運転士による懸命の回復運転で、帯広到着の頃には遅延は10分を切っていた。

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エゾシカとぶつかった特急スーパーおおぞら14号の先頭車両。車両そのものに破損などは無い模様。これが自動車だったら、かなり被害が出るのだろう。


さて、ちょうど昼間に野生動物の列車事故の話を聞いていただけに、この間の事故処理の様子を注意深く観察していたが、齋藤獣医師の話していた「事故後に速やかにエゾシカ死骸を撤去する」は、残念ながら今回も実施されておらず、線路脇に放置されている模様である。ただ、盛り土の上ではなく、下に投棄された。この後、猛禽類の事故が発生しないことを祈りたい。

ただ、やはり鉄道サイドから見ると、ぶつかった列車そのものが、事故後のエゾシカの死骸処理に時間を割くことは大変厳しいと言わざるを得ない。今回、車掌が2名乗務し、客室乗務員も2名乗務していて、運転士も含め5名の鉄道職員で線路点検から乗客の救護までを担当している。しかし、道東地区の普通列車や貨物列車の場合、通常の乗務員は運転士1名のみである。今回は現場で13分の遅延となったが、この列車が遅れたことで、対向列車の行き違いにも影響が及んでいるはずである。遅延は根室本線全体で拡大すると共に、石勝線や千歳線まで影響が及ぶ。

そうなると、事故後の死骸処理を沿線の保線区などが担うことになると思うが、これも事故発生後、現場まで人員を派遣しなくてはならない。人身事故と異なり、エゾシカの死骸処理のために、速やかにそうした体制がとれる程、今の鉄道に余裕があるだろうか?

結局のところ、エゾシカの列車事故そのものを、できるだけ無くす方向で検討することが、二次災害とでも言うべき猛禽類の列車事故も防ぐことにもつながる。そのために出来ることは何か?
はからずも鉄道と自然史の双方を研究対象としている私としては、この問題に今後真剣に取り組んでいく責任があるような気がする。さっそくデータを集めて、検討を開始したいと思う。

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